神大ロー2021年(令和3年)度入試 会社法(商法)再現答案 感想

 

 

※注意

このブログは皆さんの参考になるような答案を投稿するものではなく、中の中のロー受験生がどの程度の答案を作るのかを参考にしてもらうためのブログです。よって内容の正確性は全くないですし、どのように間違えたか、などの話をしています。

詳しくは最初の投稿へ⇒https://adc32104766.hatenablog.com/entry/2020/11/19/225344

 

答案の書き方で直した方がいいと思う点があれば指摘してください!

 

自己評価:◎

 

感想

 問題見た瞬間「重問やん」って思いました。答案を書く時間も最低限確保しておけば大丈夫だろうと思ったので、最後に解くことにしました。

 この問題は解法(1、定款が法令違反ではないか、そうでなくとも適用排除すべきではないか、を検討する)を知っていれば解ける問題だと思います。

 僕自身何度か解いたことがあり、この問題はあてはめで差がつくのかなと思っていたので、あてはめを重視しました。

 ただ、弁護士ならよくみるんですが、今回は税理士です。税理士法(あるんかな?)が六法に載っていなかったので、どこまで弁護士と同じ議論が妥当するのか少し不安がありましたが、多少外しても大丈夫だろうと思い攻めました。

 

 

再現答案 答案3枚目の1行目、所要時間45分

 

1、Xは令和元年5月20日に開催された本件総会において、Xの議決権行使の代理人として選任したAが入場を拒否され、議決権行使ができなかったことは「決議方法」が「法令」に違反する、または「決議の方法が著しく不公正」であるとして、本件訴えを提起し、本件総会の決議を取り消すことを請求するものと考えられる(会社法(以下、法名省略)831条1項1号2号)。

2、XはY社の株主であるから「株主等」であるといえ、本件総会は令和元年5月20日に開催されたところ、本件訴えは同年6月5日に提起されているから、「3箇月以内」に提起されたといえる。よって、本件訴えは適法に提起されたといえる。

3、取消事由の有無につき検討する。

(1)そもそも議決権行使の代理人を株主に限定するというY社の定款(以下「本件定款」とする)は310条に違反しないか。

(2)310条は、株式会社の実質的所有者である株主が会社の意思決定に参加することができる唯一の機会である株主総会において、株主の議決権行使の機会を確保しようとした点にある。もっとも、310条も議決権の代理行使につき、一切の制限を禁止する趣旨ではなく、合理的根拠に基づく相当程度の制限を付することは許容するものと解される。

 本件定款の目的は、株主以外の第三者が総会に参加し、議事が撹乱されるおそれを防ごうとした点にあるから、合理的根拠はある。このような制限は我が国の慣習となっているから、制限の程度も過剰なものとはいえない。よって、本件定款は合理的根拠に基づく相当程度の制限として許容されるから、310条に違反しない。

(3)もっとも、上記の310条の趣旨および本件定款の目的にかんがみれば、株主以外の者による議決権の代理行使を認めても総会の議事が撹乱されるおそれがなく、代理行使を認めなければ当該株主の議決権行使の機会が奪われてしまうような特段の事情があるときは本件定款の適用を排除し、代理行使を認めなければならない。

 Aは税理士であるところ、Aは設立及び目的が法定されている税理士会に所属し、法律や税理士会の目的、会則に従って行動する必要があり、またXとの契約に基づく任務を忠実に果たす必要があるところ、Aが株主総会に参加しても議事を撹乱するおそれはないとも思える。しかし、税理士はその職務内容の特性上、自身の才覚に従って広範な裁量の下で職務を執行することが予定されており、税理士とその契約の相手方であるクライアントの関係は企業における上司と部下のような強力なコントロールが及ぶ主従関係があるとは言えない。そうだとすれば、Aが、XがAに議決権行使の代理権を授与した趣旨に反する行動をとるおそれがないとはいえず、Aが総会に参加することで議事が撹乱されるおそれがないということはできない。

 また、Y社が上場会社、すなわち公開会社(2条5号)であるところ、日本の公開会社の定時株主総会の開催が5月から6月に集中することから、Xが他の公開会社の株主であり、他の会社の株主総会に出席しようとしていた場合には、代理行使を認めなければ議決権行使の機会が奪われるとも思える。しかし、本件株主総会に一切Y社株主が参加しないという事態は考えられないから、本件総会に参加する株主に議決権行使の代理権を授与することもできた。Xが他のY社株主に代理権を授与することが困難といえるような事情も窺われない。そうだとすれば、Aによる議決権の代理行使を認めなければXに議決円行使の機会が奪われてしまうとも言えない。

 よって、本件において上記のような特段の事情があるとはいえないから、本件定款の適用を排除しなければならないとはいえない。したがって、本件定款を適用したことは310条に違反するものではなく、そのほかの法令に反するとも考えられない。

(4)また、「決議の方法が著しく不公正」な場合とは、決議の方法が法令に違反するとはいないが、社会通念上の正義に反するような場合をいうところ本件定款による制限が合理的根拠基づく相当程度の制限であることにかんがみれば、「決議の方法が著しく不公正」とは言えない。

4、以上から、本件総会における決議には取消事由があるとは言えない。よって、Xの本件訴えにかかる請求は認められない。

以上